蒼鉛の月

Astrikos Katoikos

煤けた天蓋に 群青の裂罅が走る 廃駅の時刻表には 帰還という文字だけが欠けていた

玻璃の水脈を伝い 名もなき灯が沈降する 誰の祈念でもないものが 夜気の襞に滞留している

私は知っている 暁は約束ではない それはただ 無数の喪失が残した 淡い鉱脈であることを

ゆけ 翳りの王国を越えて

朽葉の星辰が崩れても 胸腔の焔は減じない

ゆけ 風化した神話を越えて

幾千の沈黙が累なろうとも この生はなお未完である

潮汐の書庫に 忘却の頁が積もる 古い鐘楼の影では 季節さえ名辞を失っていた

大理石の黎明を 黒曜の鳥が横切る 世界は完成を拒み 絶えず生成へ傾いている

ゆけ 翳りの王国を越えて

蒼鉛の月が砕けても 瞳の奥域は消えない

ゆけ 風化した神話を越えて

流寓の旅人たちよ まだ見ぬ地平を迎えよ

誰も語らぬ海図の外へ 誰も編まぬ伝説の外へ

ただ一縷の燐光を抱き

夜そのものより深い場所で 新たな黎明を発見せよ


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